お客様の声

VOICE


Q. 先生と顕微鏡との出会いについて教えてください


小学校に入学するかしないかという頃、医師だった祖父から戦時中に使用していたという携帯用の顕微鏡を貰ったのです。今思えばそれが私と顕微鏡との最初の出会いになりました。箱型の小さなもので、その箱を開けるとちゃんと顕微鏡の形となって観察出来るんです。その顕微鏡を使って身近な物をよく見ました。そういえばあの顕微鏡、どこに行ったのかな?
本格的に顕微鏡と向き合うことになったのは大学に入学してからです。
3回生になり病理学講座で勉強することになったのですが、研究室の先生が非常に厳しい方でした。ある時、目の前で他の学生さんが怒られ過ぎて卒倒してしまったんです、今だったら考えられないですね(笑)
しかしその先生に叩き込まれた試料の作り方や顕微鏡の扱い方の基礎が結果的に現在の私の研究を助けてくれることなったのは間違いありません。

Q. ご研究生活の中で顕微鏡にまつわる思い出はありますか?


学生生活も終盤となった頃、私は分子生物学に大変興味を持つようになりました。
分子生物学を学び始めた頃、とある先生から「形など追っても意味が無い」と言われたことが有りました。しかし、もともと病理や形態を修めていた私は「そんなことは絶対に無い、形態にも重要な情報は沢山あるはずだ」と、当時から確信していました。
本格的な研究生活が始まる中で思い出に残っているのが、遺伝子変異により腫瘍化するまさにその瞬間を世界で初めて実体顕微鏡で観察した事です。明らかに形態に異変を起こしている様子を顕微鏡下で発見した時は感動しました。
もちろん分析機器で得られるデータは重要で無くてはならない物です。しかしそれと同じ位、形の変化も重要なのです。その変化はやはり「見ないとわからないんです」よね。 

Q. 先生にとって顕微鏡とは?


無くては研究は無いとさえ言えると思います。論文ではもちろん多数のデータを用意するのですが、キーになる部分にはいつも顕微鏡写真があったように思います。
また、これは研究とは一歩離れてしまうのですが…
私にとって顕微鏡観察とはストレス解消法になっています。研究を一歩離れると、2次元の普通の切片で如何に綺麗な絵を取るか、ほとんどアートの世界になるけれども、そういう美しさに魅了されています。
腫瘍のサンプルを眺めるというのは一種の宇宙観でもあると感じます。完成した腫瘍の細胞は、あらゆる現象が起こった末に出来上がった小宇宙のようなもので、カンジンスキーやピカソの絵を解読するかのように、その発生のメカニズムを空想するのがストレス解消なんですよ(笑)

Q. これから顕微鏡に触れる若い研究者の方々へ


光学顕微鏡システムの基礎を学び、自分の目で試料を眺めるということを学んでほしいと思います。その為にも、組織学、形態学をしっかりと頭に入れてください。特に若い間に組織、形態の基礎を頭に叩き込んで、まずは正常な状態を知ってほしいと思います。
そして顕微鏡下に見える2次元の絵から組織全体の3次元を想像する術を養い、そこから細胞の中で何が起こっているのかを解き明かす方法を探してほしいと思います。

大島正伸先生の研究室のホームページはこちら