お客様の声

VOICE


Q. 幼い頃の思い出


小さい頃はアウトドア派の少年で、ひたすら野球などのスポーツに明け暮れる日々でした。一方で読書も大好きで、様々な分野の本に目を通していました。子供ながらも、本の世界に思いを巡らし、バーチャルな世界に耽るという一面も持ち合わせていました。あと、動物はとても好きでしたね。
そういえば、学研の付録として届いた顕微鏡キットで遊んでいました!既にその頃から顕微鏡とは縁があったようです。
今から思えばおもちゃのような顕微鏡です、それでもその顕微鏡で観察するのが楽しくて、毎日色々な物を観察していたことを今でもよく覚えています。
小学校の卒業文集には「学者になりたい」と書いていたそうです。自分自身は全く覚えていなかったのですが...。また、大好きだった祖母が亡くなった際、幼心に「医者になりたい」という思いが生まれた、医学部へ進学するきっかけとなりました。しかし、高校時代は物理学に没頭し、その分野への進学も考えていた時期もあったので、人生は面白いものです。

Q. 医学部入学後に出会った未知の世界「脳」


医学部に進学後、大学の講義や書物を通じ、「脳」という未知の世界へ急速に興味を持つようになりました。学べば学ぶほど疑問が湧いてくる、この「何もわからない」という事実が、私を「脳」という不思議な世界に引き込んだのです。
学生時代から研究室に出入りするようになり、研究者の真似事を日々楽しむようになりました。「脳」を知るための研究アプローチには様々なものがありますが、私は「かたち」をきちんと理解することが重要だと考え、形態学の道に進みました。「かたち」をみるバイオイメージングは目覚ましい進歩を遂げています。標識・観察・解析という各ステップを究めることが重要であり、現在もイメージング技術の向上に取り組んでいるところです。

Q. 顕微鏡の進化と新たな技術への向き合い方


顕微鏡画像の印象として非常に強く残っているのが、初めて共焦点顕微鏡で取得した画像を研究室で見た時のことです。MS-DOS上で顕微鏡を制御し、画像を取得していたのですが、とにかくその画質の悪さに唖然としました。教室内ではお世辞にも美しいとは言えないその画像を見ながらスタッフが議論されておられたのですが、逆に画質の悪さがイメージングの直観を養ってくれたようにも思います (笑)
ここ数年、光学顕微鏡は急速な進化を遂げ、多くの選択肢を得ることが可能になりました。しかし残念ながら、それによって漫然と目的意識を持たず、ただ撮影しただけのデータも増えたように感じます。
顕微鏡メーカーへは、今より更に研究者とコミュニケーションを取り、双方のニーズを確認しながら現場に即した開発を心から期待しています。また、機材の高性能化で情報量が一気に増えたことで、それを管理するシステム開発も急務です。既存の枠にとらわれず、より大きな枠組みで問題解決に取り組んでほしいですね。

Q. 今後我々が目指していきたいこと


顕微鏡の急激な進化によって、可能なことが圧倒的に増えました。しかし同時に、選択肢の多さから、何を触れば良いかわからないという不自由さも生じ始めました。
新たな研究のステージに立ち向かう時こそ、原理原則をしっかりと学び、自らの立ち位置をしっかりと把握することが重要になると思います。
これまで、サイエンスの面白さを体感しながら研究をしてきましたが、一方で決して楽しい事ばかりではありませんでした。また、何か一つを解明したとしても、次から次へとわからないことがあらわれてきます。新たに生じる疑問を楽しみつつ、しっかりと対峙して解き明かしていきたいと考えています。
「かたち」には何らかの意味があります。「かたち」が持つ意味を丹念に紐解くことこそが、形態学者の楽しみであり、また誇りでもあります。私は今、脳の回路地図について新しいコンセプトを提唱したいと考え、研究を進めています。そのためには、形態学という学問・技術をさらに発展させることが必要であると強く感じています。次々と開発されるイメージング技術を学び、ハイテクだけでなくローテクも積極的に取り入れることが重要でしょう。そして「かたち」の持つ意味に思いを巡らしながら、大局的な視点を持ちつつ研究を進めていきたいと思います。
美しい顕微鏡画像を目にした時は、文字通り言葉が出ないものです。そこに存在するであろう真実の「かたち」に光を当て、素敵な画を撮る日を楽しみにしています。

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